2024.10.22

ノーベル賞 2024

技術

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こんにちは!AIサービス開発室の鈴木生雄です。徐々に秋が深まってきましたね。涼しい気候と新調したランニングシューズを使いたい気持ちが相まって、ここ1ヶ月は週に30kmくらい走っています。スポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋、読書の秋、どんなふうに秋を過ごそうかを考えるのは楽しいですね。

さて今回のエントリーでは、最近の気になるニュースということで「ノーベル賞」を取り上げたいと思います。今年のノーベル賞は、10月8日に物理学賞が、9日に化学賞が発表されました。いずれの賞もAIの研究者に贈られたということで、AIが人類の進歩に貢献していることを象徴する出来事になりました。

物理学賞

物理学賞は、JOHN J. HOPFIELD GEOFFREY E. HINTON の二人に贈られました。Hinton氏については、ニューラルネットワークの基礎を築き、今では「AIの父」と言われている人です。ニューラルネットワーク自体の研究は1940年代頃からされていたようなのですが、実用化のメドが立たずに多くの研究者が関心を失う中、研究し続けたのがHinton氏でした。その後に、Hinton氏がトロント大学の教え子とともに、物体認識精度の競技会ILSVRC 2012で圧倒的な成果を挙げ世界中を驚かせたのはあまりにも有名な話です。ニューラルネットワークが馬鹿げたアプローチとされていた時代でも情熱を燃やし続けたところがすごいと思います。一方でHopfield氏のことはこれまで知りませんでした。Hopfield氏は、1982年にassociative neural networksという理論を発見し、ノイズを含むデータや部分的に消去されたデータを再作成できる機構を作り上げたそうです。正確ではないかもしれませんが、現在の大規模言語モデル(LLM)が穴埋め問題を使って学習をする仕組の前身になっているのではないかと思いました。

彼らの功績については、ノーベル賞の本家Webサイトに詳しく書かれているのでぜひ読んでみてください。

The Nobel Prize in Physics 2024

化学賞

化学賞は、DEMIS HASSABIS と JOHN M. JUMPERDAVID BAKER の三人に贈られました。Hassabis氏とJumper氏はGoogle DeepMindのCEOと上級研究者で、アミノ酸配列からタンパク質の三次元構造を予測するAlphaFoldを作った人たちです。ちなみに、Hassabis氏と言えば、深層強化学習を用いた囲碁AIのAlphaGo(アルファ碁)の開発者としても有名です。一方で、Baker氏はRosettaというAIによるタンパク質の構造予測プロジェクトのリーダーです。1998年には、Rosetta にアミノ酸配列を入力してタンパク質構造を取得するのではなく、希望するタンパク質構造を入力してそのアミノ酸配列を獲得することで、まったく新しいタンパク質を作成できるようにするという逆転の発想を獲得しました。これにより、まったく新しいタンパク質を構築するデノボ設計と呼ばれる分野で、驚異的な成果を挙げています。彼ら三人のおかげで、タンパク質の構造予測やタンパク質の設計が、従来の手法よりも桁違いの速さで正確に行えるようになりました。そしてこれにより、新薬の開発や遺伝性疾患の原因解明、環境や食糧問題の解決が期待できるということです。

彼らの功績については、ノーベル賞の本家Webサイトに詳しく書かれているのでぜひ読んでみてください。

The Nobel Prize in Chemistry 2024

最後になりますが、ニューラルネットワークを用いたAIの進化の過程について書かれた本として、GENIUS MAKERS ジーニアスメーカーズ Google、Facebook、そして世界にAIをもたらした信念と情熱の物語 を強くおすすめします。ノーベル賞を受賞したHinton氏やHassabis氏はもちろんのこと、他にも、元Open AIのIlya Sutskever、Metaの Yann André LeCun 、元GoogleのIan J. Goodfellow など錚々たるメンバーが登場し、GAFAMによる人材獲得競争を伴うAI開発競争がエキサイティングに書かれているので、情報が得られるだけでなく、シンプルに読み物としても面白いです。先のノーベル賞の本家Webサイトと併せてぜひ読んでみてください。